忍野八海(おしのはっかい)とは、山梨県南都留郡忍野村にある湧泉群。富士山の雪解け水が地下の溶岩の間で、約20年の歳月をかけてろ過され、湧水となって8か所の泉をつくる。忍野八海からの湧水は山中湖を水源とする相模川水系の桂川と合流する。
国指定の天然記念物、名水百選に指定。県の新富嶽百景にも選定されている。2013年には「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産の一部として世界文化遺産に登録された。
かつてこの地に存在した忍野湖が干上がって盆地になり、富士山や近くの火山山麓の伏流水を水源とする湧水の出口が池として残った姿が忍野八海である。平地となったこの一帯は米の産地となり、湧泉の水は飲料水や農業用水として活用された。
「八海」の名は、富士講の人々が富士登山の際に行った8つの湧泉を巡礼する八海めぐりからきており(多数ある湧泉のうち8つに限ったのは、8を尊ぶ仏教的思想に基づく)、富士講では忍野八海のことを、元(小)八海、内八海、根元八海、富士外八海などと呼んでいる。古くは信者たちが富士山登頂前にここで水行を行なったとされるが、1843年に各池に守護神の「八大竜王」が祀られ、出口池を一番霊場、菖蒲池を八番霊場とする巡礼路が整備された。
忍野八海はその特異な自然現象から、訪れる観光客も多く、富士山周辺でも人気の観光地として知られる。しかし、周囲の環境は観光用の商店や施設などが建ち並ぶような観光地化が進み、また人工池も造成され、特異な自然環境を楽しめる状況は失われつつある。
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